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Federal Circuit Review | November 2014 (Japanese)

| Irfan Lateef

日本航空の米国連邦政府のための活動は特許侵害になり得ない

IRIS CORP. v. JAPAN AIRLINES CORP., Appeal No. 2010-1051において、Federal Circuitは法律の抵触を理由に、原告の申立てを棄却する地裁の判決を支持した。

IRIS社は経歴またはバイオメトリックデータを記録するコンピューターチップを埋め込んだセキュアIDドキュメントを作成する方法に関する特許を所有する。IRIS社は、JALが搭乗者の搭乗手続きまたは搭乗に際してIRISの方法特許を採用する電子パスポートを使用したことにより、IRISの特許を侵害したと主張して、特許侵害を理由にJALを提訴した。地裁は、IRISが依拠した特許法がパスポートの確認について定める連邦法に相反することを理由に、原告の訴えの棄却を求めるJALの申立てを認めた。そのうえで地裁は、IRIS社の唯一の救済手段は合衆国政府に対して訴えを提起することである、またJALは合衆国法典第28編第4部第91章第1498(a)に基づき特許侵害の責任を免除されている、との判断を示した。

控訴審においてFederal Circuitは、原告の訴えの棄却を求めるJALの申立てを認めた地裁の判断を支持した。Federal Circuitは、JALの活動が(1)「政府の利益のため」に行われ、かつ(2)合衆国法典第28編第4部第91章第1498(a)に基づく「政府の許可または同意を得て」行われたことから、合衆国政府が責任を引き受けたものであると判示した。特に、JALがパスポートを調べることは偽造パスポートを発見する確立を高め、さらに政府の財源への依存を抑えるため、JALの活動は「政府の利益のため」のものであった。また、JALは特許侵害とされる活動に従事することなしには、同社が負う法律上の義務を遵守することができないため、JALの活動は「政府の許可または同意を得て」行われたと指摘した。


米国内において行われる売買交渉は侵害を引き起こすものではない

HALO ELECTRONICS, INC. v. PULSE ELECTRONICS, INC., Appeal Nos. 2013-1472 & -1656において、Federal Circuitは、米国外で販売された製品については直接の侵害または故意による侵害はあり得ないとする地裁の判断を支持した。

Halo社は、Pulse社が3件の特許を侵害したとして申立てを行った。これに対しPulse社は、米国外で製造、発送、引渡しが行われた製品を販売すること、または販売を申し出ることにより、Halo社の特許を直接侵害したものではないとの略式判決を求めて申し立てた。地裁はPulses社の申立てを認めた。残りの争点については陪審員が評決を行い、米国内において発送された製品に関してはPulse社が特許を直接侵害したと認定した。さらに陪審員は、侵害が故意によるものであり、また特許が自明性が原因で無効とされるものではない可能性が高いと認定した。Pulse社は故意の不存在の認定をめぐり、判決後の異議申立てを行った。地裁は申立てを認め、Pulse社の侵害は故意によるものではなかったと判示した。その理由として、Pulse社は少なくとも自明性の防御に依存したが、それは合理的な範囲であり、客観的に依存したことに正当性を欠くとはいえないことを指摘した。

Halo社は控訴審において、契約が米国内で交渉されたことから、米国外において販売された製品に関して略式判決を認めることは不適当であると争った。Federal Circuitは、交渉の場所に関わらず、製品が米国内において販売されたり、販売の申し出の対象となったものではないという事実は変わらないとの理由で地裁の判決を維持した。Federal Circuitは、Halo社の論法を採用すると米国特許法第271(a)を不当に拡張解釈することになり、米国特許権者に広範で独占的な権利を付与することになりかねない旨を指摘した。さらにHalo社は、Pulse社が根拠のある自明性の防御を持ち出したという理由だけで故意の判定に関する客観的基準の要件が満たされないと判断した点で、地裁は誤りを犯したと争った。Federal Circuitは地裁の判決を支持した。最終的にPulse社は有効性の争いにおいて自己の主張を通すことができなかったが、Halo社の特許の自明性に関してPulse社が問題を十分に提起したことを記録が裏付けたため、防御は客観的に不合理ではなかった。


「プログラム認識装置」というクレーム文言は米国特許法第112条第6段落の適用を受ける

ROBERT BOSCH, LLC v. SNAP-ON INC., Appeal No. 2014-1040において、Federal Circuitは、クレームにおけるいくつかの特定の文言は米国特許法第112条第6段落が適用されることに同意し、明細書がこれらの文言に対応する構造を開示しなかったため、クレームが不明瞭であるとの地裁の立場を支持した。

Bosch社は特許侵害を理由にSnap-On社を訴えた。Snap-On社は、「プログラム読み込み装置(program loading device)」と「プログラム認識装置(program recognition device)」という2つのクレーム文言が米国特許法第112条第6段落のミーンズプラスファンクション(means-plus-function)クレームに該当し、不明瞭であると主張した。地裁は、クレーム1が「by means of」という文言を使うことから、「プログラム認識装置」は第112条第6段落が適用されると仮定したうえで、当該クレーム文言は不明瞭であると認定した。地裁は「プログラム読み込み装置」について、「means」という文言の欠如に基づき、第112条第6段落を適用するものではないと仮定しが、これもやはり不明瞭なミーンズプラスファンクションクレームであると判断した。

Federal Circuitは、不明瞭性を根拠に無効性を認定した地裁の判決を支持したものの、「プログラム認識装置」はミーンズプラスファンクションクレームであると仮定した点で誤りを犯したと指摘した。Federal Circuitは、クレームが「by means of」という文言を使用することから、第112条第6段落について有利な推定が引き出されると判示する先例は見当たらないとした。それにもかかわらず、たとえ推定がなかったとしても、「プログラム認識装置」というクレーム文言は第112条第6段落が適用されることから、かかる誤りは無害であったと判断した。さらに、特許の開示は単に機能的であるため、当業者であっても、明細書の中で特定の構造を指す文言の意味を読み取ることは不可能であったと指摘した。