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Trademark Review | November 2014 (Japanese)

Bose判決後: TTAB、詐欺を理由に登録を取り消す

Nationstar社はMujahid Ahmadという人物が出願した「NATIONSTAR」の商標に異議を申し立てていた。Nationstar USPTO(米国特許商標庁)に対してAhmad氏が詐欺行為を行ったと主張した。 Ahmad氏は不動産ブローカーである。彼は不動産売買の仲介、住宅ローンの仲介および保険ブローカー業務を始めとする様々なサービスに使用する「NATIONSTAR」の商標登録出願を行った。Ahmad氏はいずれの仲介サービスの提供についてもライセンスを取得していなかった。彼は出願当時、全てのサービスにおいて当該商標を使用していたと主張し、自ら出願を行った。

In re Bose Corp. (580 F.3d 1240, 91 USPQ2d 1938 (Fed. Cir. 2009))において確立されたとおり、異議申立人であるNationstar社は、Ahmad氏がUSPTOを欺く意図で自己の出願に関して故意に重大な虚偽表示を行ったことを証明しなければならなかった。さらに、明白かつ説得力のある証拠により詐欺行為を立証する必要もあった。重い立証責任を負担するNationwide社にとって幸いなことに、Ahmad氏のおかげでその負担は軽減された。

例として、出願に「不動産売買の仲介」サービスを含めていたにもかかわらず、Ahmad氏は自己が不動産ブローカーではないと明確に証言した。Ahmad氏は不動産仲介業を所有し、その社長を務めているとのことであったが、当該事業が収益を上げたかどうか把握していないと発言した。あげくの果てにAhmad氏は、会社は事業を営んだことがなく、所得税申告をしたこともないと証言した。会社が提供するサービスを宣伝するために諸種の書類を作成したとのことであったが、彼はそうした書類を見せることもできなければ、見せようともしなかった。 それどころか、彼は宣伝用に書類等を作成したことなど覚えていないと言い切った。TTABAhmad氏のあらゆる証言の「信憑性に関する重大な懸念」を表し、最終的に、彼は出願において特定されたサービスのいずれとの関係でも、出願前に商標を商取引で使用したことはなかったと判定した。

しかしながら、Nationwide社はAhmad氏の虚偽表示が故意に、かつUSPTOを欺く意図で行われたことも立証しなければならなかった。TTABはこの立証責任を避けることはできないと指摘した。Ahmad氏が自ら出願を行った際に、記載されたサービスの全てを実際に提供していないことを認識していたことが記録により明らかになった。証言が信憑性を欠くと考えられる本件のような場合において、証拠が相当の過失の存在を示すとき、TTABは欺く意図があったと推定する。例えば、Ahmad氏は、彼の出願の中で特定されたサービスの多数は特別なライセンスを必要とするが、彼がそのライセンスを保有していなかったことを認識し、理解していたことを示した。In re Bose事件の場合とは異なり、Ahmad氏は、当該サービスを提供するために適切なライセンスを持っていないことを知りながら、自らの業界や事業活動について虚偽の陳述を行ったものと認定された。

最後に、Ahmad氏は異議申立ての審理中、自己の出願の根拠を「商取引における使用」から「使用意図」に変更した。TTABは異議申立てが提出された後は、単に出願の根拠を修正することで虚偽表示などの詐欺行為が治癒されることはあり得ないとの考えを明確にした。むしろ、詐欺行為は出願が行われた時点の陳述に基づいて判定されると指摘した。

Nationstar Mortgage LLC v. Mujahid Ahmad, Opposition No. 91177036(TTAB September 30, 2014) [先例となる]


コットン製衣類にラムマーク: L.A.M.B.は商標として機能すると認定される

歌手のGwen Stefani2004年、「L.A.M.B.」という商標の下で衣類とアクセサリーを商品ラインとする商取引を開始した。この商標は、全世界で700万部の売上げを記録した彼女の初のソロアルバムのタイトル「Love Angel Music Baby」を構成する4つの言葉の頭文字からなるものである。Stefani氏の会社は、衣類、ハンドバッグ、時計およびその他のアクセサリー商品に使用する、商標「L.A.M.B.」に関して4件の商標登録を所有している。その後、同社は様々な衣類品に使用する「L.A.M.B.」について新たな登録出願を行った。 PTO(特許商標庁)は、衣類との関係で見た場合、商標が虚偽表示であることを理由に登録を拒絶した。審査中、出願人は衣類のほとんどがコットン製であることをPTOに伝えた。出願人は登録の拒絶に対して異議を申し立てた。

商標は次の要件を満たす場合、商標法の下で虚偽表示とされる:(1) 商品の特徴、品質、機能、構成または使用上の誤認を生じるおそれがある文言、 (2) 見込み購買者が、誤認を招く記述が実際に商品を説明するものだと信じる可能性がある、さらに (3) 誤認を生じるおそれがある記述が、消費者の商品購入の意思決定の重要な部分に影響を及ぼす可能性がある。

TTABは、商標の文言の中に句読点が存在することは、一般的に商取引上で商標が持つ影響を変えるものではないと指摘した。たとえ句読点が使われていても、消費者は「L.A.M.B.」を「lamb」と呼ぶであろう。それにもかかわらず、TTABは潜在的な消費者の大多数がL.A.M.B.から「Love Angel Music Baby」を連想するため、当該商標は虚偽ではないと認定した。

出願人は、L.A.M.B.ブランドが広く利用されていることや消費者間での評価を示す証拠を提出した。市場での商品識別力を証明しても虚偽の可能性を理由とする拒絶を覆すのには役立たないが、そのような証拠は商標が商品を誤って表示しているかどうか、また見込み購買者が誤認を招く記述が実際に商品を説明するものだと信じる可能性があるかどうかを判断する際に考慮に入れることができる。

出願人の証拠は、そのウェブサイトと広告や宣伝用の資料において「L.A.M.B.」が「Love Angel Music Baby」を連想することを促進したことを示した。TTABはさらに、消費者は衣類を店頭またはオンラインで購入する際に、それがラムスキンでできているかどうか分かるため、欺かれることはないという事実に納得した。出願人はその衣類がコットンまたはそれに類似する材料でできていること、またメディア情報やオンラインカタログの所定のページがこの事実を明示することを肯定的に述べた。さらに出願人は、使用された材料の種類を問わず、その衣類、靴および帽子類の全てを特定するためにL.A.M.B.という商標を使用したことを立証した。

したがって、出願人の証拠は、見込み購買者は「L.A.M.B.」が出願人の衣類等の全ての出所を識別するものと理解し、「L.A.M.B.」がラムスキン製の衣類のみを指すとは考えないことを証明するのに十分であった。

In re LAMB-GRS, LLC, Serial No. 77756492(TTAB September 30, 2014) [先例とならない]


TTAB、消費者がZOMBIE CINDERELLAWALT DISNEY’S CINDERELLAと混同することはないと認定

出願人は「ZOMBIE CINDERELLA」を人形に使用する商標として登録しようとした。審査官は、当該出願が、同様に人形の商標として先に登録された「WALT DISNEY’S CINDERELLA」という商標と類似し、混同を生じることを理由に拒絶した。不服審判において、TTABは商品が類似し、そのため同じ流通経路で市場に出され、しかも同様の消費者層に販売されるが、混同のおそれはないと認定した。

TTABは、「CINDERELLA」が人形とともに使われると弱い言葉で、それが人形が表わすおとぎ話のキャラクターの名前であるという限られた範囲での保護が認められるにすぎないとした。シンデレラ物語は1697年頃から存在するもので、TTABはキャラクターが広く一般に認識されていることを認めた。TTABはまた、市場で販売されている様々な製造業者による「シンデレラ」人形の多数を証拠として見比べた後、CINDERELLAという文言は市場で限定された出所識別能力を有すると判定した。

商標を直接比較した結果、TTABは、引用された商標登録の「WALT DISNEY’S」の部分は所有格形式をとるため、他方とは対照的に、人形が商標登録者が創作したキャラクターであることを示すと認定した。最後に、混同のおそれについての認定の形勢を傾けたのは、出願人の商標に含まれるZOMBIECINDERELLAという文言の組み合わせであった。TTABは、「無邪気と恐怖の戸惑いを感じさせる組み合わせ」の文言を結合させたものが、不釣合いな印象のある統一された商標を作ると結論付けた。

In re United Trademark Holdings, Inc., Serial No. 85706113(TTAB October 9, 2014) [先例とならない]