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Federal Circuit Review | December 2014 (Japanese)

メディアのネット配信を対象とする特許クレームは特許不適格

Federal Circuitは、ULTRAMERCIAL, INC. v. HULU, LLC (Appeal No. 2010-1544) において、特許が特許法101条に基づく特許適格な主題を含んでいなかったために連邦民事訴訟規則第12(b)(6)に基づき訴訟却下を求めた申立てを支持した。

本件には、最高裁において前判決無効と判断され、Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories, Inc., 132 S. Ct. 1289 (2012)、そして最近ではAlice Corp. v. CLS Bank International, 134 S. Ct. 2347 (2014) に基づいて再検討させるために差し戻されたという長い最高裁上告歴がある。本件特許は、著作権のあるメディア商品をインターネット配信する方法をクレームしている。この方法において、消費者は広告を視聴する見返りに著作権物を無償で受信する。Federal Circuitは最高裁からの差戻し審において、当該のクレームには無償コンテンツを配信する前に広告を見せるという抽象概念に関する特許不適格な主題が記述されていたと判断した。当該のクレームは、クレームを特許適格な主題に変化させる要素を何ら追加せず、抽象概念を慣例的な普通の行為を用いて実施したに過ぎなかった。

Mayer判事は多数派の認定には同調したが、次のような点を強調した同意意見を執筆した。(1) 101条に基づく質問は訴訟の初期に取り扱うべきである。(2) 101条に基づく適格性の推定はない。(3) Alice判決は特許適格性を判断するためのtechnological-arts (技術) テストを示している。Mayer判事は、本件のクレームにtechnological-artsテストを適用してみて、このクレームが対象としているのは技術的な目的というよりも事業的な目的であると判断した。抽象概念を普通のコンピューターで実施しても特許適格な主題は生じない。

提出された4つの法廷助言書はいずれも被告を支持しており、問題のクレームは特許不適格な主題を記述していたと主張していた。


クレーム中の「モジュール」という用語はミーンズプラスファンクションによる限定には該当せず

Federal Circuitは、WILLIAMSON v. CITRIX ONLINE, LLC (Appeal No. 2013-1130) において、誤ったクレーム解釈による特許非侵害と無効の合意判決を破棄し、事件を差し戻した。

本件の特許は仮想教室環境に関するものであった。地裁は、「画像表示 (graphical display) 」という用語には「絵マップ (pictorial map )」という限定が伴っていると解釈した。Federal Circuitは地裁の解釈には賛同せず、実際のクレーム文言は絵マップを限定要素としてはおらず、明細書に示されていた実施例にも絵マップの提供は「望ましい (preferably )」としか書かれていなかったと論じた。したがって、絵マップを限定要素とした解釈によって明細書からクレームに限定が不適切に持ち込まれた、という論旨である。

Federal Circuitはまた、3つの理由から、「分散型学習管理モジュール (distributed learning control module )」という用語をミーンズプラスファンクション (means-plus-function) による限定とした地裁の解釈にも異論を唱えた。第一の理由は、辞書の定義は「モジュール」という用語が当業者にとってハードウェア構造またはソフトウェア構造のいずれも意味することを示している、というものである。第二の理由は、地裁は「モジュール」という一つのクレーム用語だけを修飾語句から切り離して不適切に取り上げるのではなく、問題の句を総括的に分析すべきであった、というものである。第三の理由は、問題のクレーム用語を取り巻く文脈はこの用語が構造を意味しているという結論を裏付けている、というものである。

Reyna判事は反対意見を述べ、問題のクレームでは「手段 (means)」の代わりに「モジュール」という用語を使用しており、従来型のミーンズプラスファンクション形式を用いているとして、多数派のミーンズプラスファンクション分析には賛同しなかった。「モジュール」という用語の辞書の定義は機能のみを記述したものであり、クレーム用語の文脈によって何の構造的意味も付加されてはいない、という論旨であった。


CBMレビューの決定が出るまでの訴訟停止の登録を地裁が命じられたケース

Federal Circuitは、VERSATA SOFTWARE, INC. v. CALLIDUS SOFTWARE, INC. (Appeal No. 2014-1468) において、CBM (対象となるビジネスメソッド) レビューの決定が出るまでの訴訟停止を拒絶した判決を覆した。

Callidus社は、訴訟開始後まもなく、主張されているすべての独立クレームと主張されている従属クレームのいくつかに対して異議を申し立てるCBMレビュー請求をPTOに提出した。PTOは、主張されているそれぞれの特許についてのCBMレビューを開始した。Callidus社は、それぞれのCBMレビューでPTOの決定が出るまで地裁での訴訟停止を求める申立てを行った。地裁は、主張されている特許1件につき訴訟停止の申立てを認めたが、CBMレビューでクレームに対して完全に異議が申し立てられているわけではない特許2件に関しては申立てを拒絶した。Callidus社はこれを不服として上訴した。

Federal Circuitは、訴訟停止を一部拒絶した地裁判決を覆した。米国改正特許法 (AIA) 18(b)に規定されている諸要素を分析し、どの要素も訴訟停止を支持していると判断したのである。Federal Circuitは、主張されているクレームのうち一部のみに対し異議申立てがなされている場合であってもCBMレビューによって問題が単純化され得ることに触れ、主張されているクレームがCBM手続でも異議申立ての対象とされていない場合は訴訟停止を支持しないという絶対的ルールを否定した。さらに、本件がまだ訴訟の早期段階にあったことと、訴訟停止によりいずれの当事者も不当な優位性を獲得することはないだろうという判断も、停止を支持する材料となった。最終的に、Federal Circuitは、CBMレビュー請求の決定により、当事者と裁判所にとって予想される訴訟負担が軽減されると結論した。