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Federal Circuit Review | February 2015 (Japanese)

| Irfan Lateef

クレーム解釈で地裁の事実認定が尊重されたもう1つのケース

最高裁は、TEVA PHARMACEUTICALS USA, INC. v. SANDOZ, INC. (No. 13-854) において、クレーム解釈判断の裏付けとなった事実認定の再審理では明白な誤りの有無を検討するという判断を示した。この判決は、クレーム解釈のあらゆる側面をde novo(覆審)で再審理することをFederal Circuitに許してきた長年の先例を覆し、地裁の事実認定をより尊重するものである。最高裁は、判事がクレーム解釈の際に外的証拠について事実認定を行うことは稀であるため、この新基準が多くの特許訴訟事件に適用されるとは考えていない。

Federal Circuitは、今後、副次的事実に関する紛争についての地裁の決定を再審理する際には、de novoではなく「明白な誤り」の基準を適用しなければならない。最高裁は第一に、連邦民事訴訟規則52(a)(6)には誤りであることが明白でない限り地裁の事実認定を覆すことを禁じる「明確な指針(clear command)」が説明されていると説いた。また、最高裁は第二に、Markman v. Westview Instruments, Inc., 517 U.S. 370 (1996)は、上訴審での事実認定の再審理に適用される通常規則に例外を作り出さないと説いた。むしろ、Markman 判決は、裁判所が特許を解釈する際には、クレームに技術用語や一般的でない語句が使用されている場合など、副次的事実に関する紛争を解決しなければならないことがあることを認識したものである、という趣旨である。第三に、最高裁は、事実認定を法律問題から切り離して扱うことはFederal Circuitにとって困難すぎる、という主張を退けた。最高裁は、双方を同様に扱うことの複雑さの方が、一貫性のない結果が生じる最小限のリスクを上回ると説いた。

次に、最高裁は、明白な誤りの基準を適用する方法を明確にした。地裁が特許の内的証拠だけを検討する場合には、判事が行う判断は法律的判断のみであり、Federal Circuitは解釈をde novoで再審理することになる。ただし、地裁がクレームを理解するために外的証拠を参考にする場合であって、それらの副次的事実が争われている場合には、裁判所はその外的証拠について副次的事実の認定を行う必要がある。クレームの最終的解釈は法律的結論であり、de novoで再審理することができるが、その根拠となる事実に関する紛争については明白な誤りの有無を審理しなければならない。本件では、Federal Circuitは、この事実認定について明白な誤りの有無をまず審理せずに、当業者がクレームの文言をどのように理解するかについてのTevaの専門家による説明を退けたことによって、誤りを犯した。

新証拠の不提出により故意侵害認定が支持されたケース

Federal Circuitは、BARD PERIPHERAL VASCULAR, INC. v. W.L. GORE & ASSOCIATES, INC. (Appeal No. 2014-1114) において、BPV社の血管移植片に関する特許をGore社が故意に侵害したという地裁判決と、BPV社に懲罰的損害賠償を与えた地裁の裁定を支持した。

本件は、1974年に出願され28年後に特許が付与された特許出願から生じたものである。Bard Peripheral Vascular (BPV) 社は2003年にGore社を特許侵害で提訴し、陪審はBPV社の特許は有効であり故意に侵害されたと判断した。Gore社はこれを不服として上訴した。Federal Circuitの合議体は2012年に故意侵害を認定した地裁判決を支持した。Federal Circuitは、大法廷による再審理は拒絶したが、侵害の故意性に関する意見の一部を修正するための再弁論は認めた。その後、合議体は侵害の故意性の問題を地裁に差し戻し、地裁は再び故意侵害と認定した。Gore社は再び上訴した。

Federal Circuitは、Gore社が特許無効または特許権行使不能を裏付ける合理的な根拠を主張しておらず、したがって客観的に見て未必の故意をもって行動したと判断し、故意侵害判決を支持した。Federal Circuitは、侵害の故意性を法律問題としてde novoでの再審理を行った。多数派は、本訴訟に先行する40年間の訴訟の歴史を踏まえ、Gore社には「非常に限られた合理的抗弁の余地」しか残されていなかったという見解を示した。Gore社が十分な勝訴のチャンスを得るためには、特許権行使不能を証明する新たな証拠又は主張を提出する必要があったが、Gore社はそうした証拠や主張を提出しなかった。多数派は地裁の故意侵害判決と懲罰的損害賠償裁定を支持した。

Hughes判事はこの判決を是認したが、Federal Circuitは最近の最高裁の判例を踏まえて侵害の故意性に関するFederal Circuit自体の判例を見直すべきであると主張した。Newman判事は、強い表現を用いた反対意見の中で、多数派は地裁の判断を尊重しすぎており、侵害の故意性の問題を客観的に再審理することを怠ったと主張した。また、反対意見は、たとえ故意侵害が認定された場合であっても懲罰的損害賠償は裁量的なもので、本件に衡平原則を適用すれば地裁の懲罰的損害賠償裁定は妥当とはいえない、と主張していた。

審査官のクレーム解釈が不当と判断されたケース

Federal Circuitは、IN RE IMES (Appeal No. 2014-1206) において、最も広範な合理的解釈にはクレーム文言の文理解釈のみからは到達し得ないと判断し、誤ったクレーム解釈に基づいたクレームの拒絶を覆した。

出願人の特許出願は、電子画像および動画情報をネットワークを介して通信する装置に関するものであった。クレーム1には、数ある機能の中でも、特に第一と第二の無線通信モジュールが含まれていた。クレーム34には、数ある機能の中でも、ストリーミング動画を無線通信するためのモジュールが含まれていた。審査官は、先行技術であるリムーバブル・メモリーカードが「如何なる電線も利用されていない」ことから「無線」であったと判断し、クレーム1を拒絶した。審査官は、一連の画像の電子メールによる送信を開示している先行技術を根拠に、クレーム34も拒絶した。審判部は審査官の査定を支持した。

Federal Circuitは上訴審で審決を覆した。Federal Circuitは、審査官の「無線」の解釈は、「無線」とは大気空間を通じて電波を伝送する方法及び装置を指すと明確に定義している明細書を特に考慮すれば、最も広範な合理的解釈には整合しないと判断した。リムーバブル・メモリーカードは、大気空間を通じて信号を伝送しない。Federal Circuitは、もう1つの新規性欠如の主張についても、PTOがその主張を上訴審で推進したのは今回が初めてであり、審判部が検討していれば拒絶判断の新基準を打ち立てることになり得たため、これを退けた。Federal Circuitは、画像あるいは動画を含む一連の電子メールは、明細書を考慮して「連続的な動画の伝送」と適切に解釈された「ストリーミング動画」と同じではないと判断し、審査官のクレーム34についての拒絶も覆した。