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Trademark Review | February 2015 (Japanese)

先行商標を優先権主張に使えるかどうかを陪審が判断

最高裁は、HANA FINANCIAL, INC. v. HANA BANK, No. 13-1211において、優先権の有無を判断する目的で2つの商標のタッキング(使用期間の加算)の可否を判断するのは、タッキングが消費者の視点に基づいて事実を問う問題であることから、陪審が判断すべき問題であるという判断を下した。

Hana Financial社は、「Hana Financial」という商標を侵害しているとしてHana Bankを提訴していた。Hana Bankは、先行商標であり継続的に使用してきた自社の商標「Hana Overseas Korean Club」基づき優先権を自社が保持していたと主張し、侵害を否定した。Hana Bankは、のちに「Hana World Center」と「Hana Bank」という商標を用いて営業したが、この2つの商標は先行商標と同じ継続的な商取引上の印象を作り出していたためタッキングの原則が適用されるとし、自社が優先権を保持していたと主張した。陪審は、タッキングに基づいてHana Bankを支持する評決を出した。第9巡回区連邦控訴裁判所もこの評決を支持した。最高裁は、商標のタッキングは陪審が判断すべきか、という争点に関する裁量上訴を受理し、第9巡回区連邦控訴裁の判決を支持した。

最高裁はまず、審理する問題が普通の人またはコミュニティーがどのように評価するかを問うものである場合、通常は陪審が適切な判断者であるという一般原則を述べた。タッキングは、検討すべき問題が2つの商標が消費者が同じ商標と認識するような同じ継続的な商取引上の印象を作り出しているかどうかを問うものであるため、まさにその種の問題に合致する。陪審裁判が請求されており、事実が略式判決または法律問題としての判決を下すことを正当化するようなものではない場合には、タッキングは陪審によって判断されるべきである。

次に、最高裁はHana Financial社の4つの主張について検討した。 第一に、最高裁は、陪審が法的基準を適用する例はよくあり、タッキングは法律問題と事実問題が混在している他の問題と何ら相違ないという見解を述べた。陪審への説示が注意深く練られたものであれば、陪審による法的基準の不適切な適用は防げると考えられる。第二に、最高裁は、陪審がタッキングの可否判断を行うことによって新たな法律が創り出され、そのために、これまで陪審が不法行為、契約または刑事に関わる事件について判断してきた範囲を超えて判事の領分を侵害することになるという主張には同意しなかった。第三に、最高裁は、商標制度が有効に機能するためには予測可能である必要があることによって、判事がタッキング問題に関する判断を下すことが義務付けられるという主張にも同意しなかった。最高裁は、陪審が不法行為、契約及び刑事に関する事件において法的基準を適用し処分を決定することはよくあり、商標のタッキングについて異なる扱いをする理由はないと述べた。最後に、これまでタッキング紛争は判事が解決してきたという主張について、最高裁は、Hana Financial社が例証として揚げたケースが非陪審審理と略式判決を伴う状況において発生したものであったと判断した。しかし、そうしたケースは、陪審が選任された場合および事実による略式判決も法律問題としての判決も必要とされない場合には、タッキングは陪審が審理すべき問題である、という最高裁の結論を変えるものではない。

商標中での地名使用が認められる

Federal Circuitは、IN RE THE NEWBRIDGE CUTLERY CO. (Appeal No. 2013-1535)において、商品の出所が米国の公衆に周知されていない場合には、商標中での地名使用が直ちに、登録拒絶事由となるわけではないという判断を示した。

アイルランドのニューブリッジに本社を置くNewbridge Cutlery Co.は、米国で「Newbridge」という商標の保護を得ようとした。審査官は、この商標が主に地名を記述するものであるという理由で商標の登録を拒絶し、審判部も拒絶査定を支持した。

商標が主に地名を記述するものか否かは事実問題であり、この事由を根拠として登録を拒絶するには、次の事項の証明が必要となる。(1) 登録出願されている商標が公衆に周知されている地名である。(2) 公衆が、商標の登録が出願されている商品の出所が当該の場所であると特に考えるなど、商品と場所を結びつける可能性が高い。(3) 商品の出所が商標中で地名が示されている地域である。12の基準について、関連する「公衆」とは、米国内でその商品を購入する公衆を意味する。

Federal Circuit1の基準のみ検討し、アイルランドのニューブリッジという地名は米国の公衆には周知されていないと判断した。Federal Circuitは、この判断に到達する上で、インターネットというものが存在するだけで、ある場所が周知されているという証拠になる、という考えを退けた。Federal Circuitは、アイルランドのニューブリッジの規模について、「関連する米国の購入者が『Newbridge』という語を見てそれが何を意味すると考えるかということについては何も明らかにしてはおらず、ニューブリッジが商品を購入する米国の公衆に周知されている場所であることを証明するには小さ過ぎる」と指摘した。PTOが検討した証拠にはニューブリッジが周知されているという実質的証拠が欠けていたことから、Federal Circuitは判決を覆し、事件を差し戻した。

9巡回区連邦控訴裁が「POM」と「PUR POM」の混同のおそれ分析に明白な誤りがあったと判断

Pom Wonderful LLCは、Pur Beverages社が同社の栄養ドリンクに「PUR POM」という商標を使用していることは、Pom Wonderful社の「POM」という飲料の登録商標に対する権利を侵害しているとして、Pur Beverages社を提訴した。地裁は、2社の製品の顕著な視覚的特徴を主な理由とするPom Wonderful社の侵害主張は通らないと判断し、仮差止命令を求めたPom Wonderful社の申立てを拒絶した。

上訴審において、第9巡回連邦控訴裁は、地裁が2つの商標の類似性よりも差異を重く見たことによって、明白な誤りを犯したと判断した。巡回控訴裁は次のように述べた。「我々が当然そうしなくてはならないように、両商標の多くの視覚的類似性、紛れもない聴覚的類似性、紛れもない意義的類似性を視覚的差異よりも重く見れば、類似性の要素についての判断はPom Wonderfulに有利に傾く。(中略)地裁は、誤って両商標の類似性よりも差異の方を重く見たことによって、両商標の類似性の要素をPom Wonderful社に不利に判断するという明白な誤りを犯した。」また、巡回控訴裁は、販売経路の重複、実際に混同が生じている証拠、被告の意図、新製品の投入など、混同のおそれに関する要素の分析において地裁が誤りを犯したと判断した。

Pom Wonderful v. Robert Hubbard Jr., Case no. 14-55253 (9th Cir., Dec. 31, 2014)